関西もやばい!


もんじゅ、再開ずれ込み確実に 落下の炉内装置が変形
http://mytown.asahi.com/areanews/fukui/OSK201011090110.html
2010年11月10日

 高速増殖原型炉「もんじゅ」の原子炉容器内に落下した燃料交換用の「炉内中継装置」は変形して簡単に引き抜けないことが9日、日本原子力研究開発機構の調査で判明した。機構は落下事故後、来夏にも第2段階の試験「40%出力試験」に入るとしていたが、さらに日程がずれ込むことは確実だ。それでも早期の装置引き上げを目指すとし、来年度中の運転再開の目標を掲げ続ける。

 炉内中継装置は長さ約12メートル、直径46センチの円筒形で、重さは約3トンにも及ぶ。装置を原子炉容器内から出さないと、運転再開ができない。

 もんじゅは今年5月、ナトリウム漏れ事故から14年5カ月ぶりに試験運転を再開。7月に第1段階の試験が終了した。第2段階の40%出力試験に向けて燃料交換作業を終え、装置は8月26日にクレーンで容器の外に搬出する途中に落下した。その後、2度にわたって装置の引き上げを試みたが、失敗していた。

 機構が9日、カメラで内部を確認したところ、通常は6ミリ前後の管の継ぎ目部分にあるすき間が約2.5倍の14.5ミリにまで広がっていることが分かった。装置が落下した際の衝撃で、原子炉容器の上ぶたで装置が止まり、下向きに大きな力が加わったのが原因とみられる。この継ぎ目部分よりも下にある管の接合部分が外側に広がり、装置が外部に取り出せないほど変形していると判断した。

 「今後の見通しは立てられない」。敦賀市役所で会見した機構の荒井真伸・経営企画部次長は苦渋の表情を浮かべ、こう繰り返した。

 トラブルの影響は、発生から2カ月以上たってようやく影響が明らかになりつつある。だが機構側は、装置を炉内から取り出す方法について「検討する」と説明するにとどめた。まだ全体の損傷具合がわからず、外観の目視点検を続けるため、取り出し作業は早くても来月以降になる。

 もんじゅは現在、試験運転の第1段階を終え、ナトリウム漏れ事故当時と同じ第2段階「40%出力試験」に臨む準備中だ。機構は運転再開当初、40%出力試験の開始時期を2011年春とする工程を示したが、落下トラブルで、「11年度中」と幅を持たせるようになった。

 機構の竹内則彦・運営管理室長代理は「装置の修正は準備中にできる。今日の情報を見た限りでは、日程に大きな影響は与えるとはあまり思わない」と話した。文部科学省の西田亮三・敦賀原子力事務所長は「今後の観察・分析結果を踏まえ、まず引き上げ策を示し、しかるべき時期に日程を示したい」と説明した。

 原子炉等規制法では、放射能漏れなどの事故のほか、主要設備の故障があれば、経済産業省原子力安全・保安院に報告が義務づけられている。対策工事をする際にも同保安院の認可が必要だ。

 1995年のナトリウム漏れ事故以降、もんじゅで起きた報告対象トラブルはこれで5例目。約9千億円の巨費をつぎ込んできたもんじゅだが、報告対象のトラブルはこれまで、国や機構が定めた研究開発の日程を大幅に遅らせるなどの影響を与えてきた。

 初めての報告対象トラブルだったナトリウム漏れ事故では、結果的に14年5カ月間の運転停止を余儀なくされた。

 08年9月には、原子炉格納容器内の換気をする屋外排気ダクトが腐食して穴が開き、目前に控えた運転再開を延期する事態を招いた。

 他にも、1998年には放射線管理区域の建物内で作業員が作業台から転落して骨折。99年には原子炉補助建物で作業員が扉に指を挟まれて切断する事故が起きている。(高橋孝二、笹川翔平)